ハンプティダンプティ スーパーで泣く

遥か昔、小学一年生の私は「習字」を習っていた。

私が小さい頃は 「習字」「そろばん」を習っている子が大半だった。

ピアノを習っている子はお金持ち。

ピアノがある友達の家に遊びに行くのは本当に嬉しかった。

その子は私と遊びたかったのだろうが、私は「ピアノを教えて」とせがみ 「トルコ行進曲」が弾けるようになった時は親に聞かせてあげたかった。

 

そんな時代に 習字からの帰り道、住宅の裏の狭い路地を通ると 甘く香ばしい いい匂いがする場所があった。

普通の一軒家の勝手口の扉を全開にして そこにお婆ちゃんが座って「玉子せんべい」を焼いている。

3枚で10円だったような…

友達は20円分、30円分と買うなか 私はいつも10円。

 

最初は3枚袋に入ってたが、ある日皆が先に買って離れた所で食べていた時 お婆ちゃんが口に指を当て「しーっ!」っと言って 「内緒やで」と 一枚多く入れてくれた。

 

すごく嬉しかった。

 

それからずっと10円なのに4枚入ってた。

子供ながらに悪いな、お母さんに言おうかな、と悩んだ。

でも お婆ちゃんの家族にバレてお婆ちゃんが怒られたらダメだと考えた。

何よりも お婆ちゃんが「しーっ!」ってするので誰にも言えなかった。

 

 冷めたら硬くなるせんべいだけど、(冷めても美味しい)焼きたては甘い匂いで 柔らかくて 湯気が出て 本当に美味しかったな。

お婆さんにちゃんとお礼も言えなくて申し訳ない気持ちでいっぱい。

 

今日、スーパーに買い物に行ってお菓子コーナーで袋に「玉子せんべい」って書いてあるのを見つけてお婆ちゃんを思い出した。

涙があふれてきてね…

 

「頑張るんやで」って言われてるみたいで…

 

久々に泣いちゃった 特売の山積みのサラダ油の陰に隠れて。